ヴェナート。私は貴女を上手く愛せるだろうか。
私の名は『旦那』。
私はかつて『スペイリー』という女性のことを愛していた。スペイリーはとても素敵な女性だった。
私は彼女を我が家に招き入れ、生涯を共に過ごすつもりであった。
しかし彼女は、私にとっては高嶺の花で、私なりにはあらゆる手段を講じたものの、結局手が届くことはなかった。。。
代わって我が家に来たのが『ヴェナート』だ。
私が心底望んで招いた訳ではないことも知らずに、彼女は嬉しそうに、同時にまだ照れくさそうに私と対面した。
「初めまして旦那様、ヴェナートです。」
「あぁ、遠いところを良く来たね。これから一緒に暮らすことになる。よろしく頼むよ。」
私はまだスペイリーを忘れられずにいた。
そんな気持ちのままでヴェナートを愛することができるか、内心はとても不安だった。
ヴェナートのことは写真でみたことがあった。
だが我が家に来たヴェナートは、まだ恥ずかしいからなのか、全身を『例のアレ』で隠したままであった。
しばらくそのままで過ごしていたある日、私は思いきって切り出してみた。
「ヴェナート・・我が家に来てからもう20日ほど経つ。そろそろ私に、その・・君の本当の姿を見せてはくれないか?」
「旦那様。私はまだ、自らの意思で『例のアレ』を脱ぐことはできないのです。」
「できない?なぜだ?」
「実は私の身柄は、まだキョンという女に支配されており、彼女の許可なく『例のアレ』を脱ぐことはできないのです。」
「なに?そうか、そんな事情があったのか。。よし!私に任せておけ。キョンと言ったな。私はその女と面識がある。」
「あぁ!旦那様!!とても・・とても嬉しいですが、そんなことをして貴方の身にもしものことがあったら・・私は・・」
「なぁに、心配することはない。そんなに悪い女ではないし、私が頼めばきっと大丈夫だ。安心して待っていろ。」
私は早速キョンの元へ向かった。
「キョン。新しく私の家に来たヴェナートを知っているだろう。彼女はすでに我が家の一員だ。今までは君の支配下にあったようだが、もう彼女を解放してくれないか。」
「あら、旦那。久しぶりにお会いできたと思ったら、挨拶もなしに突然そんなことをおっしゃるなんて。
ヴェナートねぇ ・・うん。
貴方がそうおっしゃるのでしたら私は解放しても構いませんよ。
でも旦那?
貴方確かスペイリーに恋心を抱いていたでしょう? 私、知ってますのよ。それはもう吹っ切れたのかしらね?そしてヴェナートはそのことを知っているのかしら?」
「む・・ぅ」
「まさか隠していらっしゃるの?そんなことで『我が家の一員』などと、どの口がおっしゃるのかしら?」
「・・貴女の言う通りだ。。だが私は彼女を我が家の一員とすることを決意したのだ!」
「決意したって・・貴方のそれは・・
ただの身勝手な同情でしょう?それで彼女を幸せにできると思っているの?」
「それは・・私にも分からない。だが、これから愛することができるよう最大限の努力をするつもりだ。」
「努力?? ふーん、努力して愛するなんて、そんなもの、本当に愛と呼べるのかしらね。」
「ぅぐっ!」
「まぁいいわ、ヴェナートの本当の姿を見てから判断することね。彼女を『例のアレ』から解放できるのは私だけよ。今から一緒に行きましょうか。」
そうして私はキョンを連れて我が家に戻った。
到着するなりキョンがヴェナートに話し掛ける。
「ヴェナート。今日から貴女は自由よ。その『例のアレ』も脱いでいいし、この旦那と生涯を共にするのも、望んで出ていくのも。」
「キョン様、自由を与えてくださってありがとうございます。私は旦那様と一生を添い遂げる覚悟でございます。」
「ふん。この情けない男とかい?」
「旦那様が情けない? いいえキョン様、旦那様はいつも私に優しくしてくださいますし、とても勇敢な方です。先ほどだって私のためにキョン様の元へ・・」
「『私のため』だって?本当にそうかね?
この男が想っているのはお前では無いかもしれないのに?」
「・・え?・・なんのことでしょう?」
「おい、旦那どうすんだい?」
「・・・・・・ヴェナート・・・・・・実は、私は君を招く前にとてもとても愛していた女性がおり、君が来てからもその人を忘れられずにいるんだ。。。」
「!!」
「だが決して中途半端な気持ちで君を招いた訳ではないのだ!
本当に・・心の底から愛しているとは・・今はまだ言えない。だが、そうなるように努力していきたいんだ!
先刻キョンに『努力して愛するなんておかしい』と言われた。
その通りかもしれない。
いや、その通りなのだろう・・
それでも、君をもっと知りたいんだ!
君にも、もっと私を知って欲しいんだ!」
「旦那様・・」
「おいヴェナート、旦那もこう言っている。そろそろあんたも本当の姿を見せてやってもいいんじゃないか?話はそれからだ。」
「旦那様の気持ちは伝わりました。私は旦那様を信じます。私もまた、まだ旦那様を心から愛しているとは言えません。お互いをゆっくり知ることから始めましょう。
でも・・
今『例のアレ』を脱ぐのは・・本当はキョン様を言い訳にしましたが、実は・・まだ・・恥ずかしいのです・・」
「じゃあ旦那!一緒に脱がしちゃおうか!」
「脱がすって、ムリヤリか?それはダメだろう。」
「いーんだよ、ヴェナートだってなんだかんだそれを待っているのさ!」
「そ・・そう?
じゃ・・やっちゃう??」
「ま・・待っ・・!!」
ビリビリ~
私はキョンと共に、ヴェナートを包み込む『例のアレ』を破り捨てた。
ヴェナートは産まれたままの姿をさらけ出した。
「い・・いやぁ 恥ずかしい。」
「なんと・・いや、美しい。
恥じることなど何もない、ヴェナート。君はとても美しい。」
「え?・・本当・・ですか?」
「あぁ。心からそう思うよ。
私は愛する努力をすると言った。
それは間違いだと分かっていても、そうするべきだと思っていた。
でも・・今は・・その・・でも・・」
「・・でも?」
「でも、そんな必要すらなさそうだ。
私は、君を、、その、、すでに・・
何というか・・・あの・・
あ、あ、あ・・
愛しているよ。」
「・・旦那様💕」
「ヴェナート💕」
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キャスト
旦那=おろし(ボク)
ヴェナート=玄関ドア YKKap ヴェナート
スペイリー=玄関ドア サンワカンパニー スペイリー
『例のアレ』=ドアの養生段ボール
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こんばんは、おろしです。
今日は玄関ドアを女性に見立てて物語風にしてみました。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
途中で『コレなんなの?』と思って帰った 人もいるでしょう。
ブログ書いてるとたまーにふざけたくなりますよね?なりません?
でも読んで頂いている方。
ふざけてるけど、書いてる方はそりゃ必死ですから。
あ、初めて来てくださった方、いつもはマジメにやってますよ?
でも
あー楽しかった。
ちなみに現実は・・
ボク↔キョンちゃん
「あのさー、ヴェナートだけど、例のアレで養生されてるじゃん?感じ見たいから一回養生取っちゃダメ?」
「えー?(ち、また面倒くさいこと言い出したよ)」
「おねがーい!自分でやるからー。ちゃんと元に戻すし。」
「あーはいはい。(コレで嫌だったらどーすんだよ、このおっさん)」
びりびり~!
てなやり取りでした。
いや玄関ドアは、ホントもめてもめて(ボクだけが)。
今日のお話通り、スペイリーに後ろ髪引かれたままだから、このままではヴェナートに失礼だなって思ってて。
だから見せてもらったんです。
結果はお話の通りです。
今はもう満足です。
以上でしたー
今回こんな風に書いてみようと思ったのはコチラ↓の方の影響です。
書き方は全然違いますけど。
とても面白い大工さんの、とても面白い、時に、いや大抵はとても変態的なブログです。
でも家建ててる人にとって大工さんのブログは本当にタメになることも多いですよー
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